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2015/02/22 (Sun) Comment(0)
『一緒にてるてる坊主を作る』『いぬたで式クラレット』を描きor書きましょう。 #kawaiiCP http://shindanmaker.com/62729

*スカーレットさんとクラシックさん姉弟。
*カップリングではない心持ち。
*なのにクラレットでお題作ってしまってすみません…
*テールちゃんとネコサイバーきょうだい。
*テールちゃんとネコサイバーはファンタジックないきもの。

大丈夫でしたら[読んでみる]からどうぞ。




*******



続く長い廊下を歩く足取りは規則正しい。赤い靴の高いかかとは高らかに靴音を鳴らし、すらりと伸びた長い脚が優雅な赤と黒のフリルに飾られた裾を捌く。白く秀でた背中はまっすぐに伸びて、磨かれたマホガニーのように艶やかな眸が前を見ていた。
メトロノームのようにリズムを刻んでいた足がふと緩み、立ち止まる。均等に並んだ窓に眼差しが行き、僅かに細められた。窓の外は細い雨。滑らかな白い背の肌も振れぬほど小さく、息が落ちる。雨脚は強くないが、空を覆う雲は切れ間ない。
視線は翻り再び前を見据える。空模様など気にも留めぬ様で、歩みは再び視線の先へ向かっていった。
目的の扉の前に立ちノックで入室を請うと、ややあった。少し待ってほしい、と言う返答に意外を感じて軽く瞠る。目の前に閉ざされているのは弟の書斎だ。スカーレットは色濃い赤茶の眸をはたはたと瞬いた。
室内に彼がいて、来客があるというのでもなければ返答はおおよそ、是、それだけだ。そしてこの屋敷に来客あれば、彼へだろうとも彼女の知り得ぬはずがない。フム。人差し指親指を顎に添えて一考。その手をそのままドアノブへ下ろした。
「入るぞ」
踏み入った部屋にはやはり、青髪の青年が一人きり。艶やかな眸を一巡させて室内を見渡す。本当に『独り』だったようだ。
愛用のロングコートはクローゼットに休んでいるのだろう。机仕事の常で、上着を羽織らないベスト姿だ。いつの間にかひょろひょろと伸びた背を中腰に屈め、袖机の引き出しを開けている。首だけを捻って戸口の姉に向き、鮮やかな青藍の双眸が苦虫を噛み潰したように撓められた。
「姉さん……」
何かを片していたらしい。引き出しを閉めて向き直る。首元のスカーフを整え、咳払い。
「開けてから言うんじゃ意味ないじゃないか」
弟の取り澄ました様子にスカーレットは口角を上げる。
「弟が道を誤っているのではと、な。すまなかった」
青い眸が軽く瞠り、ついではたはたと瞬いた。噛んで含み、言葉の意図に気付いたらしい。眉尻がついと釣り上がる。
「姉さん!」
彼自身、思わぬ声量だったようだ。一つ、息を入れる。
「冗談にもほどがある」
心外だとでも言わんばかり。だが気付いているだろうか、彼が目を逸らし吐き捨てる時、その言葉は大抵いつも虚勢なのだ。幼い頃から。
矢庭に、と。
青い眸には映っただろう。スカーレットは歩み寄った。戸口に正対する机の裏に回り、持ち主の許可を取らず引き出しに指をかける。青年の手が止めるも待たない。黒手袋が包んだ指先に引かれ、彼の隠し事を潜めた引き出しはすらりと開いた。
ひょこりと顔を覗かせた『それ』に、白い肩がくつくつと揺れる。阻もうと伸びかけた白手袋の手は行く先を失って宙に迷い、笑み含む赤茶色の眼差しを差し向けられた青色の双眸は険しく眉根を寄せた。スカーレットが摘み上げた彼の秘密は、目と鼻と書きかけた口のてるてる坊主だった。
「この雨続きでテールが退屈そうにしていたし……少し息抜きがしたくて……」
先ごろ訪ねてきた幼馴染が世間話半分の冗談混じり、晴れ乞いのまじないだと伝えてきたものを手遊びに教えてやったと言う。
「別に信じたわけではないよ。だけどテールが随分気に入って……いや、だけどほら、あいつはあんまり器用じゃないし……なかなか形にならないから……」
仕方なくだよ、と肩を竦めて見せながら、目を逸らす。困ったものだと首を振る、その様子にスカーレットは目を細めた。
テール、と普段は略されて呼ばれる黒い尻尾の猫は、一年と少し前の雨の日に、きょうだいと一緒にスカーレットが拾ってきた。猫のきょうだい二匹、自分たちも姉弟二人、ちょうどいいだろうと一匹を託したのだ。拾い上げた時には手に乗るようだった猫たちは、今ではすっかり大きくなって、屋敷も狭しと日々過ごしている。雨続きで屋内ばかりでは退屈そうと言う、クラシックの言葉もまあ、頷けた。
「フム。それで代わりに作ってやったというわけか」
肯いて、摘み上げたてるてる坊主を机の上に一つ、置く。
「ふうん」
更に一つ。
「なるほど」
もう一つ。
「まだあるな」
一つずつ摘んで出しては並べていたら、苦し紛れに絞り出す声がした。
「……つ、作りかけて置いていくから、整えていたんだ」
確かに机に並べられたもののうち、幾つかは作り手の苦心が伺える不恰好。頭が大きすぎたり歪であったり、輪郭をはみ出そうな笑顔のもの、縛った紐の結び目が緩いのか崩壊しつつあるものもある。けれど。
お手本のように端正な、まだ表情のないものもほとんど同数あるのだ。書面の進まぬ様子の机の上に、整列させて横顔を覗きこむと蒼眸はますます避けて、視線は遠くなる。
「テールだけじゃなくて、ネコだってさっきまでそこにいたんだ」
ネコはスカーレットの拾ったきょうだい猫のオスの方。『ネコ』が呼び名であり、スカーレットが名付けた。兄か弟かはわからない。当人たちもわからないと言っている。クラシックに預け、それゆえに彼に懐いたテールとは対照的に、スカーレットにべったりと懐いているのがネコだ。
「そうか」
それはすまなかったと素直に思う。昨日はスカーレットの書斎で、駄々を捏ねていた青毛のネコが思い出されたからだ。雨だから外に出てはならぬと言うのなら相手をしてくれと、休憩用のソファでクッションを一つ、引っ掻いて毛羽立たせて駄目にしてくれた。その態度できょうだいが二匹、賑やかしていたのでは書面どころではないだろう。一文字だって進まないかもしれない。
引き出しの中にはまだ作りかけ、あるいはパーツでしかないものもある。一揃い、取り上げてスカーレットは踵を返した。
「姉さん?」
雨音を湛える窓辺のソファに腰掛ける、スカーレットを青い眸が怪訝に振り返る。中綿を丸め、布を被せながら、口端を上げた。
「私だって飼い猫は可愛い」
窓の外は雨。気鬱にふさぐくらいならばこんな手遊びをしてもいい。ネコたちが気兼ねなく表で遊べるならば、弟の手だって進むだろう。
首元の緩んだ坊主を一つとる。紅い端切れを紅いリボンで結ぼうとした形跡があって、これは、ひょっとして。
座り直して書きかけの顔に筆を入れる、クラシックが半眼寄越す。
「それは、あいつのだよ」
マスター、だってさ。
スカーレットは思わず声を立てて笑った。明日は、晴れるといい。

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