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2015/02/16 (Mon) Comment(0)
ぷらいべったにちまちま落としていたもの。
某あおいさんのエディットとかあおいさんオススメ、アウトオブエデンとかに感化されてこれです。

  注
*ローレライさんとギルティくん姉弟。
*姉弟でギルレライ。近親相姦。爛れてます。

大丈夫でしたら[読んでみる]からどうぞ。






*******



霧のような雨の降る日に手を引かれ、薄暗がりの廊下を歩いていた。長く続く板敷きを、半歩先行く姉はなぜか素足で、見上げた横顔は髪に隠れて表情がわからなかった。ねえさん、と、呼ぶと細い声が確かに、大丈夫よ、と答えた。本当にそうだったろうか。窓の外では霧雨が深い緑を濡らしている。
一部屋の前に立つと扉を開け、振り返らぬ抑揚のない声が言った。ここがあなたの部屋よ。
子供部屋ではなく、設え一切、大人の身の丈に合わせてある。いつもいつも歳の離れた小さな弟だと、子供扱いする姉に辟易していた少年は、いよいよ認められたのだと興奮した。自分のものとなる部屋を一通り見て回りたかったが、彼を引く手は窓を背にしたソファまで、彼を導き歩いて行く。おとなしく従うと、彼を大きな広いソファの端に腰掛けさせて、自分は膝をつき青い眸を空を仰ぐように見上げた。その眼差しを忘れ得ぬ。辰砂をかけたような赤みの茶色い眸が見上げながら見詰め、色の掠れた唇が囁いた。
「今日からここで、一人で眠るの。できるわね?」
素直に頷いた弟の頭を撫で、その眸は微笑んでいたはずだ。
あれから十年。どこで道を間違えてしまったのか、彼にはわからない。



姉の住居に、『帰る』と彼女は出かけていた。もう三日ばかり帰っていないと住み込みの少女が言う。おそらくは家主よりも余程、この少女の方がこの家に住まっているだろう。
帰宅の頃合いを聞いているかと尋ねれば少女は、ジャスパーグリーンの髪を揺らして、否定。然もありなん、それが姉の常である。そして何より、お互い様だ。久方振りの自室のソファに寝そべりながら、青年は笑った。
「ふうん……まあ、いいよ。あ、そうだイノセント」
名を呼ばれ振り返る、髪と同じ色合いの眸はまるで、居座るつもりかこの厚かましい来客、と言わんばかりだ。
「なんでしょうか、ギルティ様」
体裁を保って応える、しかし声も棘を含んでいる。眺めながら、軽薄の笑みを乗せた頬に杖をついた。
「今日の晩はチキンがいいな。ソテーにしてよ。マスタードは乗せないで」
おとなしやかな面差しの中で柳眉がぴくりと震えた。彼女はどうも、容認していないらしい。
「ローレライ様を通してください」
ぴしゃりと封じて、ソファに並べ置かれたテーブルへの水拭きを再開する。少女は黒衣だ。この家の主に倣っている。悪戯心が湧いて、つい腕が伸びた。
「やっ……!」
華奢な腰を抱えて寄せる。もがいても力の差は歴然。よろける体を胸に抱きとめ、碧玉色の髪を結んだ紫のリボンを噛んだ。嫌ですやめてという懇願を嗤い咥えた薄地の端を引く。解かれ散らばる髪がばらりと音を立てるようで、すると、細い肩は震え碧の眸から涙は零れ落ちた。
咥えたリボンを吐いて捨て、解けた髪に鼻先を突っ込んで囁く。
「意地悪言わないでよ。だって姉さんは」
「私が、なぁに?」
思わず瞠る。瞠る眸の無防備に、しかし誰が気付いたろうか。振り返る時すでに、蒼眸にコバルトの光は取り戻されていた。
開けっ放しの扉の前、ちょうど室内と室外との境に黒い服の女性が艶麗の笑みを浮かべ立っている。その後ろにはもう一人、黒衣の少女だ。服装が同じ黒色で不明瞭だが、不安そうに伺い覗く度、珊瑚色の髪がちらりちらりと彼女の背の向こうに揺れていた。
「アムール」
艶めいた女性の声に顧みて呼ばれ、珊瑚色の少女は恐る恐るとその背から顔を覗かせた。
「イノセントの髪を直してあげてちょうだい」
こくりと頷いたのが、髪の揺れで判じられた。少女の端正な面差しもすらりとした体躯も、今もほとんど彼女の背の向こうで、半分も見えやしないのだ。
腕の中で少女が身を捩るのを、おとなしく手放してやった。少女への命は、同時に弟への令でもある。女主の弟として、この家の住人と自負はあっても、少女二人を雇っているのは実際彼女だ。その手前、あえて無体を続行とはできなかった。いや、そもそも。
本来の目的の、その人が現れてなお、少女に固執する意味がない。
腕の中からウサギのように逃げ出す少女と入れ替わり、ローレライがゆっくりと歩み寄ってくる。捨てられたリボンを拾い上げ、入れ違い、逃げ出す少女に手渡した。紅い爪の指先でその頬を撫でる。
「ごめんなさいね。愚弟には言い聞かせるわ」
青褪めていた頬を赤らめて、少女は首を振る。リボンを受け取り礼をして、もう一人と連れ立ち去っていった。戸は閉めて、と彼女らの主が言ったから従って。
ノブがかちりと回り切り、丁寧にドアが閉まると部屋は急にしんとした。連れ立ち去る少女らの足音さえも聞こえない。窓の外、日は明るい。暖かそうに晴れていたが、室内には差し込まず、針葉の緑ばかりが眩しく見えた。
「酷いな」
言って小さく笑って見せる。二人きり。乗せていた足を下ろして、ソファに腰を掛け直した。
「愚弟、だなんてさ」
見送るかのようにドアを見つめていた眼差しが返る。見上げた瑠璃色と、かちりと合う、物憂げな眸。それはしかし、遠い雨の日を思い出させる。
この部屋を始めて開けた日。同じようにこのソファに座る彼を、罪と呼ばれる前の少年を、魔性の名で呼ばれる前の少女は同じ眸で見上げたのだ。ゆるり、彼女の左手が持ち上がる。
右の頬に温もりが触れた。撫でる細い指の先、爪に真紅の色を乗せたそれは繊細だ。その繊細な動きのままに、柔らかな掌が包み込む。
「お帰りなさい、カイト」
囁く、歌うような声音。その音は、あの雨の日と同じに左の胸に火の点るような早鐘を打つのだ。笑んで、下肢の曲線へと続く括れに腕を廻らせた。
「ただいま、姉さん」



愚かではあろう、とは思う。
どこで道を間違えてしまったのか、どれほど考えてみてもわからないのだ。
姉の素肌に触れながら、過たずここにたどり着いたのではないかと思うほどに。

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