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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2013/11/15 (Fri) Comment(0)
10/27スパークにて新刊なぞ出しておりました。
ご案内です。


タイトル「スノードームの朝」
A5オフセット、52ページ
カイト×メイコ

雪の日 朝」を広げた話になっています。

注意
*モジュカイメイです。
* CP はニンジャ× 大正浪漫。と、ホワイトブレザー× セクシープディング。
*それなのに浪漫さんとホワイトブレザーが結婚済み。
*不倫の四角関係です。
*時代はなんちゃって。なんちゃってファンタジー。
*本作におけるメイコ=大正浪漫、カイト=ニンジャです。

自家通販始めております。
通販につきまして』からお申込いただけますのでよろしければご利用下さい。


続きからサンプルです。







部屋は火鉢を置いて暖かい。カイトは窓辺に明かり取りと雪見の小窓から外を眺め、メイコは火鉢の傍で編み棒を繰っていた。見遣る外は雪とすら見えない白い景色だ。さっきまでただ吹雪くだけだった窓の外が、強く虎落笛を拭いて逆巻き始めた。庭への出入りもするような大きな窓は既に雨戸を閉めてあるが、小窓の方の外窓も閉めておいた方がいいだろう。
カイトは立ち上がった。またひと目、編み進めたメイコが顔を上げる。気にかけさせないよう計ったつもりだったが、深い茶色の眸は立ち上がったカイトを見上げたのだ。少し、遠い日を思い出した。
「閉めましょう。窓が割れるといけない」
カイトの言葉に一つ頷き、それからメイコは確かめるように窓を向いた。縁には既に雪が乗り、外はまるで白く煙るようだ。
「今日も……」
メイコが呟きかけた言葉を飲んだ。カイトの顔を見、わらう。
「なんでもないわ」
いつからか、メイコは微笑みに隠し事をするようになった。眉尻を下げた微笑に覆って飲み込む言葉はその時々で違っても、そこにひそめた感情はいつも同じであるように思う。だがそれが何なのかまでは、カイトにはわからない。メイコは教えてはくれない。教える必要はないと、過ぎた領分だと判断されているのなら仕方がない。
微笑んで飲み込んだのは彼のことについてであるように思う。メイコの夫はホワイトブレザーを着て、今日も朝早くから出掛けている。彼は、近ごろ央都の友人を訪ね、資金繰りと人材集めに奔走しているのだと言っていた。メイコが、だ。食膳を整えて待ちながら今日は戻らぬと彼の遣した使いに聞き、仕方ないわ、と微笑んだメイコがそう言っていた。
窓は雪の気紛れに応じられるよう二重窓だ。ガラスを入れた内窓を少し開け、手早く外窓を閉める。吹き込まないよう注意したつもりだったが、雪は窓辺と黒の手甲を巻いた手を濡らした。
「他の窓も見てきます」
雪を火鉢の縁に払う。桟に残った雪も部屋の暖かさにすぐに溶けて消えるだろう。お願いね、とメイコが答え、カイトは頷いた。
廊下はしんと冷えていた。静かで、うち廊下であっても外の風音が聞こえてくるような気もする。低く唸る獣のような。
表回りは警護と合わせカイトの本来の職務だ。途中に裏手を覗く。家を整える仕事は大よそで外と内に分かれ、その外の連中に声をかけるためだ。手を分けるよう指示をして、裏口から外に出ようとした。
だがそこに、彼が現れた。ホワイトブレザーの青年。肩に雪を乗せていて、表のポーチからこちらへ巡ってきたようだった。端正な面差しがカイトを見て、きまり悪そうに歪んだ。
「お帰りなさいませ。旦那様」
窓は任せ、カイトは彼につこうと考えた。正面からこちらに回るまでとは言え、雪をかぶってしまっている。世話が必要だ。濡れた衣服を引き取り、拭くものを渡して、それにメイコに伝えなければならない。きっと彼の帰りを待っていただろう。
だが青年は、構わないで良いよ、と掠れるように言った。カイトの手を避けるように、自身でさっさとコートを脱ぐ。
彼はカイトの目に気付かないようだった。雪を払ったコートを小脇に抱え、足早にすり抜けようとする。脱ぎ捨てた靴は雪まみれだ。家人の仕事であるからというのを断わって、あの靴を丁寧に磨いたのはメイコだった。彼も知っているはずだ。リンから聞いて、驚き瞬き、頬を緩めて礼を言っていた。その時のメイコの翳りのない微笑を、カイトは見ていたのだ。
「奥様が」
カイトが声をかけると、青年の足がにわかに止まった。
「部屋でお待ちしています」
青年は振り返った。薄青い眸がカイトを見る。激しく撓められ、まるで憎むような眼光だった。
その眼差しが意外だった。カイトは彼を温厚な人物であると思っていたし、何より憎まれる理由がわからない。
「お前が」
吹き荒れる風と雪ほど低い声音で、青年は呟いた。その言葉は明らかにカイトに向いていた。しかし声はカイトに向いたものではなかった。言うつもりはなかったのだろう。続く言葉を彼は噛み殺して飲んだ。飲み込もう、と、していた。
カイトは彼の言葉を待っていた。彼の意図が見えなければどうともしようがないからだ。蒼眸は見詰め、ただ待っていた。
だがそのことが、余計に彼を駆り立てた。
コートを抱えない左手が、カイトに伸びてきた。避けることは容易かったが、同じくらい受けることも容易かったから、敢えて抗わなかった。彼の手はカイトの襟を掴み、勢いで壁に突き飛ばしながら押し付けた。
コートは取り落とされ、二人の足元に落ちる。ホワイトブレザーの青年は両手でカイトの襟を掴み、眼差しはすでに激昂していた。下から睨み上げるようなその視線の鋭さへの疑問と共に、目に入る彼の襟元の紅汚れがカイトの神経を翳ませる。
「お前が、手を伸べてあげれば良かったんだ」
飲み込み切れず言葉は零れ落ちた。掠れる声音で絞り出し、既に悔いているようだった。薄青の眸は揺れ、端正な面差しは年よりも幼い泣き顔のように歪む。
掴む両手を払おうと思えばできた。だが彼は主であるし、メイコの夫でもある。手荒なことはできなかった。だがそれ以上にカイトもまた、ぶつけられた言葉に気を削がれていた。
薄青と冴えた青藍と。二色の青はしばし、膠着した。
「どうしたの?」
二人は驚き振り返った。廊下の曲がり角にメイコが立っている。尋常でない様子の長年の家人と夫の姿に、茶色の眸は揺れる。大輪の花を咲かせる袖口に隠れた白い手が、襟元に宛てられて握られた。
「……お帰りなさい、あなた」
眉尻を下げ、メイコは微笑む。呼ばれた青年は歯を噛みながら掴んでいた手を離し、ああ、とだけ答えた。
「疲れているんだ。少し眠るから」
カイトとも、メイコとさえ目を合わさずに立ち去ろうとする。返り見もしない彼を追わず、はい、とメイコは肯いた。
遠くに雪風の鳴るようだった。メイコとカイトは押し黙る。白い足袋に包まれた足がそっと歩を進めた。カイトのすぐ傍までやってきて、足元に落とされたコートを拾い上げる。
メイコは、カイトを見上げ、眉尻を下げて微笑んだ。



〜後略

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