忍者ブログ
カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
[130]  [128]  [127]  [126]  [125]  [124]  [123]  [122]  [121]  [120]  [119
2024/05/03 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/06/25 (Mon) Comment(0)
初めから → 赤い人魚と青い人形の話 1

若干のCPレンリンです。
双子とかでないリンとレンは初めてです。
でもいとこです。名字出て来ないし、もっと離してもいい気があとからしました。

改めて弁解しますと、既存の話を元に新しい民話っぽいものを作る試みなので、ローレライをなんだと思っているんだ、というような何かはその、ええと、申し訳ありません……






レンは追いかけて行ってリンの腕を掴む。強く引いて振り向かせると、眉尻を跳ねた強気な眸にはけれど涙が膜を張っていた。
見られた、と気付いたようで、リンは掴まれたのとは逆手の袖でぐいと拭う。再び現れた面差しは、こすれた目許を赤くしていた。
リンのその様子を見て、レンは言い募った。
「ねえ、やめようよ」
止めるべきだと強く思った。
「危ないよ。うちのお父さんとお母さんもダメだって……」
まだ年長者の言葉に重きを置く年齢だ。感情に従う傾向はあるが、リンも悪童ではない。叔父叔母に当たる人たちの言葉も、普段ならば充分に拘束力を持つはずだった。
けれどリンは思い切り腕を振り、レンの手を払った。
「だって!」
拭った涙がまたじわりと浮かぶ。
「レンは悔しくないの!? あたしたちだけじゃない、おばあちゃんまでバカにされて!」
忙しい両親たちに代わり、幼い頃から二人の面倒を見てくれた祖母を、リンは深く敬愛していた。もちろんレンも、彼女を尊敬しているし、愛している。
だがレンは祖母の名誉のためにリンを危険にさらすわけにはいかないのだ。
「でも……だからさ、こんな時にこんなところに来たって知れたら、おばあちゃんだってきっと怒るよ……」
何としても引き留めようとした。しかし言葉を誤った。レンは、もしリンに何かあればその大切な祖母が悲しむのだと、そちらを告げるべきだった。
今のリンは自分が叱られることは怖くない。
「嫌。絶対におばあちゃんのお話の方が正しいんだって証明するの」
残雪の林道を再び歩き出した。
向かう先は西の淵だ。村の傍の渓流には大きく蛇行し、急な流れに水底が深くえぐられた淵がある。
祖母の語る昔語りには、その淵の航行の安全を守るために沈められた娘があって、彼女は今も、守り部として水底に在り続けていると言うのだ。リンはその話にいつも涙し、心優しい娘を思ってきた。
けれど最近、実しやかに語られる噂がそれを否定する。淵に住むのは半人半魚の水妖で、歌で船を沈めるローレライだと村の内外問わず、野次馬が現れている。挙句に祖母の語る心優しい娘の物語を偽物呼ばわりするのだ。
我慢がならなかった。
「リン!」
後ろからレンが懸命に追い縋ってくる。
「でも、最近あの川で事故が多いのは本当だよ……」
リンは振り返り、レンを睨む。
「だけど! あの淵で死んだ人はいないじゃない!」
興味本位で訪れる人が増えたせいだとはレンも思う。人魚がいようといまいと、こんな季節に不用意に水に入れば、事故を起こして当たり前だ。
当り前なのだ。
レンを振り切ろうと、リンは再び歩みを急がせる。急がせたところで林道の脇、幾らも離れない目の前の喬木の合間の灌木が、がさりと音を立てた。
リンは怯んで足を止める。レンがはっとしてリンの前に出た。冬眠明け、寝惚けたクマも少なくない。
だが木陰を分けて現れたのは奇矯な服装の男だった。端正な顔立ちの青い髪。同じ青い眸の涼しげな目許を緩めて尋ねてきた。
「ローレライを見に行くのかい?」
リンとレンは警戒心をあらわに男を睨む。
「あたしたちの淵のローレライは嘆いて身を投げた水妖じゃないわ!」
背から乗り出すリンを、レンは必死に押し留める。男が二人を害すなら、必ずリンを守り通すと決めていた。
だが男は二人には寄らず、長い腕を水平に指差し示した。
「彼女の姿を確かめたければ、淵の上の橋に行くと良い」
提案のあったことにも、提案の内容にも意外さを感じ、リンとレンは顔を見合わせた。
二人の視線のないところでカイトの口許が歪み、笑った。


拍手[6回]

PR


この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
忍者ブログ [PR]