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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2012/06/10 (Sun) Comment(0)
※亜種注意

メイトとメイコの話!のつもりが……
CPはメトカコ、カイメイ。

メイトさんはバイク乗りだといいと思ってます。
真っ赤なドゥカでもいいんですけどヤマハなのかなやっぱりとか。
ヤマハはXJRが好きでした…見た目。
でもいっそヤマハのメイトでもいい…
 
 





陽の傾く土手沿いの道を行く。昼には夏の陽気だが、夕刻に差し掛かれば気温は随分と下がってきたようだ。ましてバイクで風を受ければ、寒さを感じるほどにも涼しかった。背中の同乗者に、防寒着を借りさせて良かったと思う。
黄色から赤へと信号が変わり、ブレーキを握った。整備の行き届いた愛車は、拗ねることなく停止線を前にタイヤを停める。
「おい」
背中から帰る答えはない。ひっく、えぐ、と鼻をすする声だけだ。
「俺のジャケットで鼻拭くのやめろよ……」
腰に回された腕に力がこもり、却ってぐしぐしと頭がこすりつけられる。拭いてないもん、とでも言っているつもりだろう。メイトは深々と息をついた。
左にウィンカーを出す。信号が変わるのを待って、直進すればたどれる帰路をゆっくりと曲がった。
河川敷の入り口にはすでに閉門の車止めが立てられ、時間外の案内が出ていた。陸閘の傍にバイクを止め、同乗者に向かって下りるよう促す。
「おい、カイコ」
メイトが振り返ると、ぐすぐすと鼻をすすり、緩慢な動きながらもカイコは素直に従った。
青い芝の斜面を上り、土手の上に立つと川の向こうに空が赤とオレンジ、ピンク色を交えて染まっている。風はやはり少し冷たかった。遅れて、隣にカイコが立つ。俯きがちの頬は膨れて、丸めた背中の全身から立ち上るのは悋気か怒気か判断しづらいところだ。
メイトはがしがしと頭を掻いた。このまま連れ帰ったのでは同居人たちに何を言われるか、想像に難くない。
「不細工な顔になってるぞ」
勢いよく青い目が見開いて、振り返る。
「めーくんのせいじゃん!」
デフォルメされたイラストの怒り顔のよう。泣き怒りの顔に、危うく噴き出しそうになった。
「なんでちょっと笑ってるの!」
顔には出ていたらしい。悪い悪いと謝って、また怒られる。
「めーくん、悪いと思ってないでしょ!」
その全力で、全身で腹を立てる様子に、メイトは隠すのもやめてにんまりと笑った。オレンジ色の夕日の中にも、澄んだ青色の髪に手を乗せてぐしゃぐしゃと撫でた。
「悪かないだろ。別に」
小奇麗に飾り立てることのない、不器用で不細工な感情の体現が、メイトには眩しく思える。言われた方に曲がって伝わるのは、それはまた当然とも思うけれど。
悪いよ、いじわる、めーくんのばか。カイコはぐすぐすと罵詈雑言を零している。メイトは青色のやわらかな髪をまたぐしゃぐしゃに撫ぜた。
「バカはお前だろ。あんなキス、誰にもしてるじゃねえか」
ぱしりと頭の上の手を払い、青い眸が睨みつけてきた。睨んでから気になったのか、乱れた髪を両手でせっせと撫でつけ直し、また睨んでくる。
「誰にするのもほんとはヤだけど、メイちゃんはダメ! 特に、絶対、ダメなのっ!」
その断固とした拒絶は意外で、いっそ感心してしまった。だが感心してから、不思議に思う。
「なんでだよ。お前、メイコ嫌いじゃないだろ?」
ボーカロイドとしての技術、技量からも、人柄、性向からも嫌いじゃないどころか随分慕っているのだと思っていた。よく懐いているのだと思っていたし、一応他人ではないような気がするメイトとの間柄を考えても、実は嫌っていたというなら、驚きと共に何か、名状しがたいモヤモヤとしたものを感じてしまう。
だがメイトのその一瞬の思案は杞憂になった。
「嫌いじゃないよ! むしろ大好きだよ! だからダメ!」
メイトは首を傾げる。杞憂になったことに安堵はしたが、ますます意味がわからない。
「あ、もしかしてお前、実はメイコに惚れて……」
「違うよっ!」
カイコは全力で否定する。どうしてわからないのかと頬を膨らませる。
夕暮れの河川敷に人の姿はなく、遠くに犬の手綱を引く人影が一つあるだけだ。陽がゆっくりと沈んでいく。
「めーくんが女性になったらメイちゃんなんだよ!? 世界で一番素敵な女性、ってことだよ!? だから絶対にダメーっ!」
ぎゅっと両手を握って力を込め、カイコは叫ぶ。あかがねの光が映り込んで潤んだ眸が煌いていた。
メイトは唖然とした。それからふと、笑みが零れ落ちる。探していた問いの答えを、あっさりと出された気がした。
「やっぱりバカだな、お前」
腕を伸ばし、ふわふわした青い髪の後ろ頭に手を廻す。襟首のやわらかい髪の中に手を差し入れて、押さえ支え、軽く屈んだ。
「……っ、んっ!」
息を詰める、くぐもった声。重ねながら口角がつい、上がる。
触れ合わせた唇を、離れ際にぺろりと舐めた。
「メイコの口にはしねえよ」
海色の、鮮やかな青い眸を覗き込んで笑うと、暮れる日の色にではなく頬が染まっていった。引っ込んだのかと思った涙が、再びじわじわ浮かんでくる。
可愛らしい唇を数度閉じたり開いたりして、カイコは肩で息をする。小さく、めーくんのばか、と呟いた。
メイトは笑って、悪かったな、と答えておいた。
夕陽の帰り道、初夏の日暮はまだ涼しかったけれど、背中に抱きつくカイコは温かった。
 


 -了-

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