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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2012/05/03 (Thu) Comment(0)
双子の弟に『雪のように白い粉末を』。






ラウンジには二人だけが残されていた。リンが去り、メイコとカイトが立ち去ったドアを睨み付けるレンと、そのレンを見詰めるミクと、二人きり。
レンは激昂していた。押し黙り、口を結び、ただの一言も発することはなく、炯炯と眸に青白い火を燃すように彼らの立ち去ったドアを見詰めていた。
レンに取り、許し難い事実は一つ、リンが泣いていたことだ。いつかこんなことになるのではないかと危惧していた、その通りになったのだ。
対としてこの世に生まれ落ちた始まり以上に、レンはずっとリンと共にあった。リンの傍にあったのは、レンだけだったのだ。彼女を守り愛しんできた自負を抱くのは、当然の権利だとレンは思っていた。だが唐突に現れた姉であるだけの人物が、リンの心を占めてしまった。
その人物が奇矯でも何でも、レンには拘りない。リンだけを愛しみ、リンに笑顔を齎してくれるならば構わなかった。けれどそんな人物がレンを置いてほかにいるはずがない。リンがいくら彼女に心寄せようとも、いつかきっと、彼女はリンに背を向けるに違いないと思っていた。その時リンはきっと悲しむのに、と。
静かに静かに怒りを湛えたまま、レンは一つ歩を踏み出す。背後からミクが、声をかけてきた。
「どこへゆくの?」
メイコが去った窓辺の椅子に腰かけ、浮かべた白い頬笑みと同じに、その声はたおやかだ。レンは振り返り見て、答えた。
「リンのところに行くよ」
当たり前のことだ。リンは泣いていた。慰めなければならない。レンの務めだ。
ミクは得た様に頷く。
「それから?」
レンは瞠った。ミクは答えを求めてはいなかったのかもしれない。白い白い笑みを深くして、尚も問う。
「今は慰めても、それでリンの憂いを取り除けるのかしら」
リンのことなら誰より知っている。誰より。メイコより。
だからこそレンにはわかるのだ。リンはメイコを恋うている。彼女が益にならないことを告げても、今のリンには届かないかもしれない。
レンが答えに詰まったのを、ミクは見てとっただろう。一つ、頷いた。
「リンは、メイコを好いていると言っていたものね」
ぎり、とレンは奥歯を噛んだ。それは受け入れ難い、しかし事実だ。
「それでも」
レンは振り払う。
「リンの傍にいられるのは俺だけだ」
リンもいつか気付くはずだ。その時まで必ず、レンはリンの傍にいる。決意だけでレンは、再び踵を返そうとした。
その背に更に、声はかけられた。
「そうね、レン」
肯定。先程とは違う驚きを伴って、レンはミクを見た。
ミクは頬笑みを浮かべている。その表情は変わった様子を見せない。ただ花緑青の眸は耿々と煌いていた。
「リンの一番傍近くに在るのは貴方だわ。メイコじゃない」
その言葉はレンの心を奮い立たせた。昂りを面には見せず、当たり前だよ、と一言だけ肯いた。
ミクの眼差しが微笑む。
「だから、これをあげる」
差し出された指先は小瓶を一つ摘んでいた。レンが怪訝に見遣ると、ミクは小瓶を振ってみせる。ミクの掌にさえ包み隠れる小さな瓶の中で、雪のように白い粉末がさらさらと揺れた。
「溶かすものは水でもお酒でも平気。注ぐ器は……リンに渡しておくから」
はっとして、レンはその小瓶の中身を知る。そして並べられた大切な半身の名に、強く気を惹かれていた。
注視するレンの眼差しに、ミクは眼差しを返す。
「リンには私が伝えておくわ。貴女を守るのはレンで、そのためのものを渡しておいた、って」
レンは、その言葉に強く頷いた。歩み寄って行って、ミクの手から小瓶を受け取る。リンも、ミクの言葉になら耳を傾けるだろうと思った。メイコに向ける愛情とは違うが、強く信頼を寄せている。
暮れる日に翳す。レンの手の中で、雪色の粉を詰めた小瓶は飴色に染まり始めた光を返していた。

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