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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2011/09/16 (Fri) Comment(0)
 犬蓼へのお題:フラスコをさかさまに/(ああ、そっか、知らないうちにこんなにも、)/安心ってなんだろう http://shindanmaker.com/122300

学生カイメイ。





洗い終わった三角フラスコを目の前まで持ち上げて陽にかざす。ぽたりと垂れた滴がきらきら光を弾きながら落ちていった。
フラスコの向こうに空かし見るぐにゃりとたわんだ世界。放課後の喧噪が遠くにわんと響いていた。
変なの。心の中で呟いたら、いきなり声がした。
「あんた、何やってるの?」
落として割るところだった。大惨事だ。驚いて振り返るとそこには見知った彼女の制服姿がある。
「めーちゃんこそ、なんで」
尋ねると彼女はちょっとむっとした表情で口を結んだ。
「学校でそう呼ばないで」
言ってるでしょ。
機嫌を損ねてしまったかな、とも思ったけれど彼女は直ぐにいつも通りに戻って、科学室をぐるっと見渡した。
「先生いないの?」
化学教師はそう言えば、彼女の所属する合唱部の顧問だった。いないよ、と答えるとむむっと眉がひそめられた。
「職員室にもいなかったんだけどな」
耳の後ろの髪をくしゃりとつかんで、視線をはずすのは考え込む時の癖。彼女のことならなんだって知っている。
そう、思ってた。
幼馴染み、一つ違い。だけど高校生にもなると学年の隔たりは、やっぱりずいぶん大きかった。
「で、あんたは?」
きっと見たままだ。放課後に一人で実験用具洗い。
「じゃんけんに負けた」
見たままだし簡潔に告げると、またちょっと悩んだ顔をして、じっと見詰めてきた。
ずっと昔、小さかった頃には「男の子みたい」なんて言われて良く拗ねていた。手を引いて歩いて、一緒に遊んでくれてた女の子。
「単に、じゃんけんに負けたのよね? いつも押し付けられてるとか…」
思わず噴いた。
「ないよ」
彼女の中では泣き虫の男の子のままなんだろうか。
「なら、良いけど」
そう言うと彼女は近寄ってきて、隣に立った。手伝ってあげる。
驚いて、良いのに、と答えた。
「どうせ先生待つから」
言いながら、もうごちゃごちゃとフラスコやらビーカーやらが突っ込まれたバケツに手を伸ばしてる。白い腕が水に浸るのを見て、何となく目をそらした。
変わらない。
変わっていく。
夏服の袖から覗く彼女の腕は白くて細くて、いつ、彼女の背を追い抜かしたんだっけ。カイトは割らないように気をつけながら、洗い終わった三角フラスコをさかさまに置いた。
校庭からは運動部のかけ声が残響のように響いている。
まだ暑い。だけどもうじき、秋がくる。

-了-

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