カイメイ中心
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VOCALOID二次創作小説サイト
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メイコ愛をこっそり謡う
レンの立ち位置がいつも貧乏くじな気がして、やんちゃないたずらっ子にしておけば…とたまに思います。
そんなレンもいつか書きたい。
そんなレンもいつか書きたい。
姉が怪我をした。
レンに三人いるうちの、一番上の姉だ。
怪我自体は大したこともなく、いくらもしないうちに自己治癒力が働いて、消えてなくなる程度のものだった。
だから大丈夫。
それが、油断だった。誰より姉自身の。
「平気平気。こんなの大したことないわ」
うっすら血のにじんだ腕を振ってみせて、笑っていた姉の顔がよみがえる。隣で兄が青い顔をしていた。
髪も眸も気に入りのマフラーもイメージカラーまで青いくせに、更に真っ青に蒼褪めていた。レンの見たこともない表情だった。
そして三日後。姉は朝、起きて来なかった。
レンとリン、そして次姉のミクに仕事があって、そんな日には姉は決まって朝食と、昼食の弁当を用意してくれる。けれどそれを兄のカイトが替わり、姉弟は異変を知った。
熱を出したらしい。怪我をしたときに、内側の損傷に気付いていなかったのだ。
仕事、休みたい。三人ともが思っていた。思っていたはずだとレンは思う。
それでも口には出さなかった。それは姉がきっと一番哀しむ行為だからだ。姉はボーカロイドとしての勤めを愛している。
言葉少なの朝食を終えて、兄弟たちが玄関に向かおうと廊下に出た時だった。姉の部屋のドアがかちゃりと開いた。
開けたドアに寄りかかり、気怠そうな姉が笑みを浮かべて見せる。
「いってらっしゃい」
糸が切れた。ミクが。そしてリンも。
駆け寄って、リンは姉の腰に、ミクは胸に抱きついた。姉は二人の頭を撫でながら、歌うようにわらう。
「私は大丈夫よ。ちゃんと頑張ってらっしゃい」
大丈夫、なんて何の根拠もない。それでもミクは頷き、リンは眦にたまった涙を拭ってまわした腕を離した。
良い子ね、と姉は二人の頬にキスをして、レンの方に紅茶色の眸を向けてきた。
「あんたも、要る?」
あー…
判断力鈍ってんのかもしれませんが、斜め後方に立ってる青い男声ボーカロイドが、マジ見たこともない色んなもの混ざった笑い顔してんで、ホントやめて下さい。
とレンは思ったので、病人は早くベッドに戻れよ、と可愛げもない言葉を返しておいた。
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