カイメイ中心
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メイコ愛をこっそり謡う
初めから → 赤い人魚と青い人形の話 1
あと、尊敬するフォロワーさんが、神話とかおとぎ話は既存のものを細かくなぞるのもいいけれど、個々が想像して新たに作り出していくのもいいと思う、なことを仰っていたのを、何の捻りもなく実行してみた結果だったりもします…
…何の捻りもなく実行した結果がこれだよ!
あと、尊敬するフォロワーさんが、神話とかおとぎ話は既存のものを細かくなぞるのもいいけれど、個々が想像して新たに作り出していくのもいいと思う、なことを仰っていたのを、何の捻りもなく実行してみた結果だったりもします…
…何の捻りもなく実行した結果がこれだよ!
目覚めて、自らが何を為すべきか考えた。作り手たる主は既に亡き。墓前、遠い記憶のようにその声がカイトに囁きかけてくる。
声に描かれる景色は幸いの光景だった。愛しい人と過ごす四季。愛した人が何者であるかなど、その幸福の前では意味を持たなかった。
その声に従い、亡き人の志を果たすことが自らの為すべきと、カイトは判じた。眠りについた主に花一輪を手向け、カイトは歩き出す。刷り込まれた記憶をなぞり、カイトは歩んだ。
荒野も雪山も人形の身には苦にならない。剣が峰を超えるのに、人ならぬ体躯は充分に役立った。
清水を流す渓谷を眼下にした時、湧いた感情を使命の一端を果たした安堵と考えていた。だが思い返して、カイトはそれを否定する。
胸を締め付けるもの寂しさとほっと息をつきたくなる安心感。人が『懐かしい』と言い表す感覚だと今では考えていた。
水音がして、カイトは振り返った。川面に人の姿の半身が浮いている。
季節が移ろい、梢は葉を落とし、渓流に人の姿を見なくなってメイコは時折、昼日中にも水上に姿を見せるようになった。この淵が航行の難所と呼ばれた昔とは違い、遊泳期の物見遊山がなくなれば、人の訪れはほぼ見られなくなってしまう。
「寂しいのでは?」
聞いたカイトに、メイコは静かな笑みを湛え答えた。
「私は、ここで命を落とす人がいなくなるよう、立てられた柱だもの」
達観であるのか諦観であるのか、カイトにはわからない。メイコ自身は判断さえも棄てているだろう。
泳ぎ来て岩に上がる体を支えて助ける。腕を巡らせた腰は細くて華奢で、あまりにもあえかだ。水温もずいぶん下がってきているのか、水気は感じないがひやりとする。抱きしめて引き寄せたくなるのを堪え、手放した。
「水の中は寒いのでは?」
この岩からは見えない岸壁の上に大きな道が敷かれて以来、時期外れに川を訪れるものはないのだから、敢えて冷やかな水中に身を隠す必要はないように思えた。単純に考えての言葉に、深い飴色の眸がじっと視線を返してくる。カイトは意を捉えかねて注視を返した。
メイコは答える。
「空気よりも水の方が温度変化は少ないの。底の方なんて、たぶんここより暖かいわ」
ならば別の疑問が湧いてくる。意外に思い、カイトは首を傾げた。
「ではなぜ、水面に? 貴女ともなれば人の近付くのは、水底にあっても知れるだろう」
するとメイコは呆気にとられたようだった。まじまじとカイトを見詰め、やがて顔を赤くして眉尻を上げる。唇をぎゅっと一字に結んだ。
怒りを示すようなその表情に、カイトはうろたえてしまった。
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