カイメイ中心
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メイコ愛をこっそり謡う
初出:Pixiv
家族が増えた。妹だ。
鴇色の長い髪、ターコイズブルーの意志の強そうな眸。落ち着き払った涼やかなアルト。すらりと背の高い、女声ボーカロイドで名前はルカ。
ゴーイングマイウェイをすぐ上の姉から、喧噪にあふれた家族の中でも貫くマイペースをもう一つ上の姉から、天地が返ろうとも玉座は返らないと笑う君臨者としての資質を一番上の姉に学んだ彼女は、我が家の四番目の女王。四つめの玉座だ、とカイトは思った。
一つめは目の醒めるような赤。
二つめは萌える緑の色。
三つめはまばゆい黄色。
そして四つめ。
長い鴇色をふわりと肩に掻き揚げ、眸のターコイズがカイトを射る。形の良い薄い唇が冷然と断じた。
「今日ばかりは、許しませんわ」
声が魂のボーカロイドだ。魂に想いを乗せて、響かないはずがない。そして。
カイトとて、受け手としても感覚を研ぎすまされたボーカロイドだ。ルカが魂たる声に乗せた感情は痛いほど理解できる。
と言うか、痛い。ザクザク刺さってくる。
「それは、許し難いことですわ。カイトさん」
氷のように冷たく燃える眸に、カイトは思った。ヤバい、死ぬかも。
「活け造りにして、天日にさらして差し上げます」
二人が対峙したリビングには、春まだ浅い午後の弱い陽が射し込んでいる。今日は珍しく兄弟全員が休日の、のどかなのんびりとした一日だったはずだ。どうしてこんなことになったのか。
走馬灯よろしく、カイトは一日の出来事を思い返した。