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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2012/02/27 (Mon) Comment(0)
遅刻カイト誕です。
いつもと違う書き方をしてみました。

あまり意味はないですが、いわゆる「うちの子」です。
いつもは兄弟でアットホームコメディしてるあの子らです。
他の話を知っているとによによが少し増量程度だと思います。


 


息を詰めるように彼女の声を待つ。
コール音を一回と半分。耳に慣れた声がして、つい口許が緩んだ。


『……もしもし』
「もしもし、めーちゃん?」
『ん。どうしたの?』
「んー、どうもしないんだけどね……あ、いま部屋だよね」
『そうだけど。カイトも?』
「うん、ホテルの部屋戻ったとこ。ベッドの上。ベッドもなんか大きいよ。広すぎて落ち着かない」
『だからそれ、贅沢よ?』
「や、わかってる。わかってるよー」
『あんたね……』
「ん、むしろめーちゃんと二人で使いたい感じ?」
『……』
「もしもし? めーちゃん?」
『……そんなこと言うためにかけてきたの?』
「や、違うけど」
『じゃあ、何?』
「ん?」
『何かあったの?』
「ないよ? なんで?」
『さっきかけてきてたでしょ? 着信見て、何かあったのかと思ったから、今……』
「かけてくれるところだった?」
『……』
「かけてくれるところだったんだ」
『……何よ』
「何って、決まってるよ。すっごく嬉しい」
『何が』
「えー、嬉しいじゃん。俺が電話かけようとした時に、ちょうどめーちゃんもおんなじこと考えてた、ってさ。シンクロニシティ? 運命かなあ、とか」
『たまたまでしょ』
「だから、そのたまたまがさ……」
『それより、何? 用事』
「えー」
『何よ』
「用事なきゃ、電話しちゃダメ?」
『えっ……』
「だめ?」
『……』
「あー……んとね、寝る前にもう一回、めーちゃんの声聞きたくなったの」
『……』
「他意ないよ。めーちゃんの声聞きたかったの。それだけ」
『じゃあ、もう聞いたからいいじゃない。明日も早いんでしょ? さっさと寝なさいよ』
「えー……」
『……』
「……え? あれ? めーちゃん?」
『……座ったとこ』
「あ、椅子?」
『ん……』
「……へへ」
『何が言いたいの』
「なんでもない。さっきはさ、電話貰ったじゃん? だから今度は俺からかけよう、って」
『何よ、それ』
「さっき、すごく嬉しかったんだよ。電話越しでも今日お祝いしたい、って言ってもらってさ、代わる代わるみんなお祝い言ってくれてさ。嬉しかった」
『……ミクが言い出したのよ。おめでとうくらい伝えたいね、って。それで、リンが電話かけようって……レンはちょっと、気まずそうだったけど』
「うん、嬉しかった」
『……ルカも……ちょっと、言いにくそうだったけど』
「や、むしろルカがちゃんとおめでとうございますって言ってくれたことに俺は感動した」
『だから、別に私が何かしたとかはないし……』
「でもめーちゃんも」
『え?』
「めーちゃんにも、おめでとう、って言ってもらって嬉しかった。すごく嬉しかったよ。ありがとう」
『……て』
「ん?」
『どういたしまして』
「うん……」
『何よ』
「……え、なんだろ、すごく照れる」
『なんで、あんたが照れるの……』
「いや、めーちゃんの照れが移って」
『……バカでしょ』
「あ、めーちゃん、いま顔赤いでしょ? 真っ赤でしょ」
『……うるさい。自分の顔色がわかるわけないでしょ?』
「否定しないね、めーちゃん」
『何よ、そんなこと言うためだったら、もう切るわよ?』
「え、だめ。待って」
『なんなの、もう……』
「……さっきさ、何してた?」
『え?』
「さっき。俺がかけて、めーちゃんが出らんなかった時」
『……洗い物。携帯は部屋に置いてて、夕飯の片付けしてたの』
「え、あれ? 今日ってリンの当番じゃなかった?」
『そうだけど……あのコ、明日は初めてのスタジオでしょ? 早く寝かしたくて……』
「めーちゃん過保護……」
『わかってるわよ、でも……』
「いいけどね。俺はめーちゃんのそゆとこも好きだし」
『……反省するわ』
「え? そう言う流れ!?」
『気を使わなくて、いいのに』
「えー、ほんとにそういうつもりじゃないよー。俺はそういうめーちゃんが好きなの」
『……ばかね』
「俺の長所だからね!」
『そうね』
「え、否定してよ!」
『ふふ、やあよ』
「えー……」
『……』
「……」
『……時計、ある?』
「……うん。日、変わったね」
『……そうね』
「……遅くに、ごめんね?」
『いいわ。大丈夫』
「そう?」
『うん……』
「……」
『……』
「……ね、めーちゃん。あの」
『カイト』
「……な、なに?」
『あの、ね、その……だめじゃないから』
「え?」
『用事、なくてもいいわ。私も声、聞きたかった』
「めーちゃん……」
『……』
「へへ……」
『あと、ね』
「うん」
『ありがとう。』
「え?」
『カイトが、こっちに来てくれて良かった。嬉しかった。私、本当にね……』
「めーちゃん、ズルイ!」
『え?』
「なんで、いま言うの!」
『え……だって……』
「もー、さ! それ言われた俺の身にもなって! もー、ひどいよ!?」
『あの……ごめん……』
「もう一回だからね!」
『は?』
「俺、明日の仕事終わったらもう、ものすごい勢いで帰るから! そしたらもう一回言ってね? ちゃんと、俺の顔見て、手の届くとこで言ってね!? そしたらもー、今日の分までハグして、キスして、離さないから! 絶対だからね!?」
『……あのね、カイト。ちょっと気持ち悪い』
「えっ、なんで!?」
『……やっぱり、それはちょっと気持ち悪いと思うわ』
「二度言うの? 再確認しちゃうの!?」
『でも……、待ってるから』
「……!」
『ちゃんと仕事終わらせて、普通にゆっくり落ち着いて帰ってきて。ね?』
「……うん」
『カイトの好きなもの、たくさん作って待ってるから』
「……うん」
『仕事、がんばってね』
「うん」
『また……明日ね』
「うん……また、明日」
『おやすみなさい』
「おやすみ、めーちゃん」


こちらから通話を切ることができなくて、しばらくお休みを言ったそのままに携帯電話を耳に押し当てていた。回線の向こうには吐息みたいなメイコの気配があって、彼女もきっと同じなんだと自惚れる。
向こうから回線が途切れたのは、メイコの方が忍耐強かったのだろうとカイトは思った。そのタイミングが少しでも遅ければ、きっと一言を発してしまっていた。
途切れたラインの向こうで、メイコはまだ手の中の携帯電話を見詰めているだろうか、それともすぐにたたんで、いつものように彼女の愛用のライティングデスクの上に置いただろうか。
その横顔を思い浮かべながら、カイトも通話画面を閉じてサイドボードに携帯電話を置いた。



-了-

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