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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2011/10/28 (Fri) Comment(0)
犬蓼へのお題:女の子にはなれないけど/「泣いてもいいのかな。」/閉じ込めておくなんて出来ないよ http://shindanmaker.com/122300 

注:アイドル咲音とカイコ(女装)
カイトがだいぶアレです。
続き物です。





朝靄の街をゆく。女の子の振りをやめた少年の姿で、カイトは電車に乗った。オーディションを受けたのと同じ大きなホール。一年振りの場所へ。
ホールにはすでに大勢のスタッフが準備を始めていた。おはようございます、と挨拶をすればにこやかに挨拶を返してくれる、彼らをこれから裏切ろうとしているのだと思うと、握った拳がそれでも震えた。
止まりそうになる足を叱咤して目指す。地下の控室。かんかんと乾いた音を鳴らす階段を下りて、狭い通路の奥に並んだ部屋の二つきりに、名札が入れられていた。
咲音メイコさま、と書かれた名札を見て、ドアを開ける。背中のザックを下ろして、楓のような赤色と銀杏のような金色のリボンをかけた小さな箱を取り出した。折れ曲がらないようにノートに挟んできたカードをリボンに差し、箱をテーブルに置く。みっともなく、涙がこぼれた。
ジャンパーの袖でごしごしと目を拭って、鼻をすすりあげた。
「…だって僕は男なんだよ」
声に出してしまうと涙は止まらなくて、顔中をこすった袖口はついにはぐしゃぐしゃになった。
ぐしゃぐしゃの顔を帽子を目深にかぶって隠し、カイトは部屋を出た。そうっと閉ざすドアにバイバイと呟く。
隣のドアに掲げられた名札を取って、握った拳ごとポケットに突っ込んだ。ポケットの中で始音カイコの名がくしゃりと歪んだ。
 
   ・・・
 
朝には見かけたと言われた姿はなくて、代わりに控室にプレゼントが一つきり。
綺麗な赤と金で彩られた小さな箱に、さしこまれたカードを開いてみると丁寧な文字で一言だけ。
『お誕生日、おめでとう』
いつも控えめなあのコらしいな、とメイコは思う。箱の中身は三連の指輪だった。薄い赤色と、薄い青色と、ダイヤみたいな透明な色の宝石が付いている。
それが本物の宝石かどうかなんて、メイコには関係がなかった。あのコがくれたから宝物。
華奢な三つの輪っかの連なりを、ギュッと胸の前で握った。俯いた時にマネージャーのお姉さんが、ノックをしながらドアを開ける。そして今日のプログラムの変更を告げた。
握った手に力がこもる。
「ねえ」
俯いて隠された表情を見た人はいない。
「泣いてもいいのかな」
 

---続

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