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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2012/01/20 (Fri) Comment(0)
涼介Pの『見返り美人』のタエコさまの二次『最後の見返り』(PIXIV)の派生(三次)小説『花火』の続きと言うかなんというか。

注意。
カイメイでぽルカ。
カイトがあほっぽい。
メイコが病気理由で留年経験あり。
理系大学想定。




 
 
 
 
降り仰ぐ。幼い少年の目に映ったのは、膝を抱えた少女だった。
銀杏の金の陽が降り注ぐ白い場所。階段を登りきった、屋上へと続くドアの前の踏みあがりに、彼女は腰掛けていた。見開いた眸に陽光を浴びた輪郭は輝いて見え、こくりと息を飲む。そっと登ったつもりの階段は、靴底をこすってきゅっと音を立てた。
少女がはっと顔をあげる。
「だれ?!」
強気にカイトを睨んだ眸には、けれど涙が浮かんでいた。
「ここは上がってきたらいけない場所なんだから!」
カイトは階段の中程で足止めを食い、困って首を傾げた。理にかなわない。
「はいっちゃダメな場所にどうしているの?」
じっと見上げた先で少女は言い澱む。カイトは何だか悪いことをしている気分になってきた。
入ってはいけない場所にいることではない。見上げた少女の眸の涙が引かないことだ。
「…私は、いいの。今日はとくべつ」
彼女の言葉にふうんと頷き、カイトは階段を下りず、上った。少女の隣にストンと腰を下ろす。驚いたように瞬いた眸が、三拍のあとに強く睨みつけてきた。
「ぼくも、とくべつ」
深く考えたわけではない。歳上らしい少女の言葉をまねただけだった。
またちょっと睨まれた。けれどやがて視線はほどかれて、小さな声が呟いた。いいわ、と。
「その声。入院してる子じゃないでしょ」
なら、とくべつでいいわ。幼かったカイトは気付かなかった。許された、そのことだけを喜んだ。
 
 
「声」
難しい顔をした友人にカイトは苦笑する。
「そう。彼女は声で俺を聞き分けた。たぶん目が見えてなかったんだ」
だとすればますます、彼女にわかってくれと願うのはむつかしい。頼りは声だけ。だがとうに声変わりした成人男性の声音に、就学前のボーイソプラノを見付けてくれと言うのは無理難題に等しかった。難題に答えるべきは求婚者であり、輝夜姫ではない。
「それで…どうする?」
神威の問いにカイトは確かめるように言葉を選びながら答えた。
「俺が、彼女を探していたんだ。振り向いてもらうための努力は俺がする」
悪友は、それでこそお前だよ、と笑ってくれた。


---続

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