カイメイ中心
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VOCALOID二次創作小説サイト
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メイコ愛をこっそり謡う
涼介Pの『見返り美人』のタエコさまの二次『最後の見返り』(PIXIV)の派生(三次)小説『花火』の続きと言うかなんというか。
注意。
カイメイでぽルカ。
カイトがあほっぽい。
メイコが病気理由で留年経験あり。
理系大学想定。
注意。
カイメイでぽルカ。
カイトがあほっぽい。
メイコが病気理由で留年経験あり。
理系大学想定。
返る答えはない。友人はカイトを見ていたが、見ていただけだった。
「バカにしてもいいよ」
カイトは言ったが、彼がそういう反応を返すとは思っていなかった。真摯に受け止めてくれるであろうと思ったから話をしたのだ。何かというと、ズレていて騙されやすそうで心配、などと言われるカイトだがそのくらいは人を見る。
「いや、バカにはしないさ」
案の定、端正な顔立ちをくしゃっとさせて作った苦笑での答えは好意的なものだった。
「神威ならそう言うと思ってた」
カイトは得意げな顔をした。いつもは言われるばかりだが神威も相当に生真面目なお人好しだと思うのだ。
だが神威はカイトの皮肉めかした指摘には応えず、実験用の資料をかたす手を再び進めながら言ったのだ。
「むしろお前らしいと思ったよ」
思わずカイトの手が止まる。振り向くと厚い分類表を棚に戻しに行く背が見える。不本意極まりないカイトは、何が、と聞いた。
「直感での行動。それでも大概あとから理由がついてくるところさ」
カイトは驚き瞬いた。見える背中は肩を揺らして笑っている。
なんだよやっぱり、と言いかけた声を神威は遮った。
「前世なんてものは科学に照らし合わせれば荒唐無稽だ。だけどお前の直感は信じたんだろう?」
薊の花の女をさがしている、と。
振り返ったニヤリとした顔には腹が立ったが、ああ確かにそうだ、とカイトは納得した。探している。
カイトも手元のスケッチブックを閉じた。日は陰り始めている。研究室の小さな書庫はもうだいぶ薄暗くなっていた。
「出るなら閉めるぞ」
神威が教授から借りた鍵を鳴らした。
「出るよ」
スケッチブックと筆記用具をカバンに押し込み、同定のために開いていた図鑑を元の棚へと慌てて戻す。ぴょんと飛び出すと、神威がドアを閉めて鍵をかけた。
「まあ、しかし無謀な話ではあるな」
研究室にはまだ人が残っていた。泊まりで実験、という学生もいるのだし、珍しくもない。書庫から出てきた二人を振り返ったのも反射的なもので深い意味はない。
いくつかの視線に応えず、神威は教授の部屋の戸を叩こうとしていた。その腕を掴む。
「何がだよ」
教授は気さくな人物だか、この会話を続けたまま入室というわけにもいかない。神威は掴まれた手を下ろし向き直ると、考えてもみろよ、と言った。
「お前のばあさまのカンを信じて探し人が人類だったとして、だ。日本人とは限らないだろう? 男女比1:1と仮定して、70億人近く、その半分で35億分の1、更に同じ年代の女性であると限定して仮定しても…」
「違う」
強い否定に神威は眉をひそめた。普段から立証を要求されるような学問をしていると、こんなくだらないやり取りにさえ正答を求めてしまう。だから神威が、ならばお前の答えを聞かせてみろという態度になったのは、半ばクセのようなもので他意はない。
「彼女は日本人だよ。歳は同じくらい」
それもカンか。尋ねた神威は挑戦的だったが、それにもやはり他意はない。
「違う。会ったことがあるんだ」
薊の花の少女。ばあさまの呟きを聞いて程なく。カイトは出会ったのだ。
「俺がさがしてるのはあの子だ」
それはどんな、と。
神威は尋ねようとしていたはずだ。しかしその問いは形にはならなかった。
「失礼しました」
ドアを開け、教授の部屋から学生が出てくる。出てきたドアのすぐ前に人がいようとは、彼女も思わなかっただろう。
ぶつかってよろけた彼女を、カイトは反射的に抱きしめる。転んだらいけないと思ったのだ。
腕の中、少しくすんだ色の眸が驚いたように見上げてくる。はっとした。
見知らぬひとだった。この研究室の学生ではない。学科の同じ学年でも見たことはない。見たことがあれば気付かないはずがない。
「あの、ありが…」
「好きです」
「え?」
頭は真っ白だった。言う言葉は一つしかなかった。
「ずっと好きでした!」
研究室にはまだ人が残っていた。悪いことに教授の部屋はドアの正面に机が置いてある。部屋を出て一歩でカイトとぶつかったのだから、ドアは開けっ放しだ。
彼女の顔はみるみるうちに赤くなり、そしてカイトの頬が高らかに鳴らされた。
急ぎ足で彼女が出て行った研究室、そのメンバーたちを代表して神威が、憐れみを込めた声を送った。
「当たり前だろう」
---続
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