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カイメイ中心 * VOCALOID二次創作小説サイト * メイコ愛をこっそり謡う
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2024/11/23 (Sat)
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2012/01/19 (Thu) Comment(0)
王妃=a皇帝aaa伯爵夫人aa伯爵aaaa侯爵夫人aa侯爵=?
IIIIIIaaIiIIIIIaaIiIiiiiiiiiiIiIIIIIaaIIIiIIIIaaIIIIiiiiiiiiiiiiiiiiiIIIIaIIIIIIIIII
iiiiiiiiミクiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiカイトiiiiiiiメイコiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiリンレンiiiiルカ

というのが(一応の)世の中の認識。


王妃=a皇帝aa伯爵夫人aa伯爵aa侯爵夫人aa侯爵=?
IIIIIIaaIiIIIIIaaIiIiiiiiiiIiIIIIIaaIIIiIIIIaaIIIIiiiiiiiiIIIIaIIIIIIIIII
iiiiiiiii×iiiiiiiiiiiiミクiiiiiiiiiiiiiiiiiカイトiiiiiiiメイコiiiiiiiiiiiiiiリンレンiiiiルカ

というのがカイトの認識。でした。
うまく出てるかな…



 


 
 
 
日の射さない窓辺に寄り掛かり、カイトは庭を見詰めていた。暖炉には火が爆ぜ、部屋は程よく暖まっている。だが景色はどこか白々として見えた。
重く雪をはらんだ雲が、空を覆っている。日がいつ暮れるとも知れない。あの雲の向こうにすでに日の光はなく、偽りが照らしていたのだとしてもそうと知ることはできないのだ。
ぼんやりと思い、カイトは自嘲した。自身を嘲り笑う。
「良くない笑い方ね、お兄様」
ドアの開く音と共に甘い声音が入ってきて、顧みる。そこには元凶たる少女が立っていた。カイトは心中で毒づいた。然もあらん。笑う以外に如何とする。
ミクが訪ね来るばかりでない。メイコが屋敷を空けるようになった。ミクに呼ばれ、侯爵家を訪ねている。ミクと共に訪ね来る双子たちの家だ。カイトが懸念を示して見せても、大丈夫、と宥められるばかりで聞き入れられない。
傍に置きたい、共に在りたいと願ってようやくかなえたのに、また離れ行く。しかも今度は彼女自身の意思で。奪われたのだと嘆くことさえ許されない。否、あるいは。
「姦計に陥れられているのだと訴えては?」
歌う声音でミクは退路を断つ。どんな悪意を証明して、姦計だと訴えるのか。冷静さを取り戻させられて、カイトは歯噛みをした。
「いっそ狂って、彼女を檻に閉じ込めてしまえれば楽なのに?」
緑の眸は、まるで籠の中の小鳥を愛でる眼差しだ。籠の戸は開かず、小鳥の羽搏きが無力のものと知っている。
心中を一字一句違わずなぞる囁きに、カイトはただ息を押し殺すしかない。暴かれることに恐れを感じているのではなかった。易々と言い当てられるほどに単純にしか考えられなくなっていることが恐ろしかった。
ミクが微笑む。
「どうなさるの、お兄様」
とうにカイトの心は読んでいるだろう。向き直り、鋭く眼差しで牽制した。
「その呼び方、やめてくれないか。彼女に聞かれたらどうする」
名目上、ミクはメイコを訪ねてきているのだ。捜しに来ないとも限らない。メイコにはこの部屋へ自由な出入りをして構わないと告げている。性格を考えれば必ず声をかけてくるだろうが、迂闊な一言を聞かれる可能性は充分にある。彼女に王宮の深淵に触れさせる気はない。
軽やかな声音が、あら、と言った。室内を横切り、勝手にベッドに近付く。
「本当のことでしょう?」
端にふわりと腰を沈め、小首を傾げて見せた。それをカイトはねめつける。何を企んでいるのか、少女の微笑からは判然としない。
ミクはベッドの上に散らばった信書の書き損じに視線を落とし、それらを撫でるように広げた。筆致は女性。カイトの母の手によるものだ。
「それとも」
机の上には手記の類が乱雑に重ねられている。つい先程までのカイトの作業を察して、ミクは三日月が笑うように目を細めた。
「知られたくないんですの? 血の繋がりなどない、と」
白い花のような微笑を胡乱に見詰めていた青い眸が、やがて驚きに見開かれる。碧玉の淡い緑が、カイトの焦りを見透かしていた。
「聡明なお兄様らしくありませんのね」
甘い声音が笑声を零す。
「ひと棟を燃せと命じた方が、離れにお姉様一人だと思っていたと?」
青い眸の目が険しく歪められる。
カイトの母は感情の薄い人だった。端正な面差しとカイトと同じ青い色みばかりではなく冷めた様子で、笑う様子も見せなかったが、そればかりでなく怒りも悲しみも見せない人だった。無機物的とさえ見えた女性の感情は、死後に私文書をあさってようやく見えた。
母が父を愛していたのをカイトは知った。だからこそ父が愛した女が、その子供が、そしてまたあの館が許せなかったのだろう。
ではカイトが巻き込まれたのは偶然か。疑問は湧いた。二の次であったにせよだ。
確証はない。母は何も残さなかった。
父への情を、メイコへの憎しみを、語った所は僅かながらあった。信書の、あるいは書付の端々に、ごく僅か。しかしカイトへは、何もなかったのだ。感情のひとかけらどころか、その名を綴る文字さえ。
だがもしもカイトが愛しい人との間の子であるなら、確かにおかしいのだ。憎々しい女性の影と共に、火の中にくべるような真似は。
カイトが手繰る思考を、嘗めて見るようにミクは笑う。
「ええ。異腹のきょうだいはお兄様と、お兄様の大切な方ではありませんわ」
片親違い、と告げられていた。カイトが誤解すると踏んでのことだろう。ミクの言葉に偽りはない。
偽りは、カイトを息子と呼んだ父の言葉だ。父のその言葉を信じていたから、メイコとの血縁を思い込んでいたから、ミクとの血縁は母との繋がりだと思っていた。驚きに瞠る眸に映るエメラルドには、心底と言わんばかりの愉悦が浮かんでいる。
「望む婚姻と引き換えに、お兄様を引き取って秘すことを飲んだのですって」
それを受け入れた伯爵は臣下としての貴族意識の、高い人物だったようだ。ミクはそう言って笑う。
「その点は良く、お姉様に受け継がれていますのね。ああ、いえ」
赤い唇は弧を描く。
「姉ではありませんものね。お兄様の、大切な、方」
母の秘密に感慨は湧かない。そういうことかと得心するだけだ。やはりと胸に落ちる境もある。
だが心火は点る。敢えての言葉であったかと思うと、低く唸る声音を律することができなかった。
「知っていたんだな」
蒼眸の眼光を鋭くする。
「二の舞にはならない、と」
ミクの肩が震えた。
「当然ですわ。『お兄様』」
くすくす、くすくす。堪え切れないと言う風に、細い肩は揺れる。カイトは忌々しく、拳を握った。
ああ成程、当然のことだ。ミクに取ったら笑わずにはいられないだろう。カイトはそう理解する。全てが思惑通りに運んで、もし逆の立場であれば今度はカイトが、堪え切れないだろう。口許に浮かぶ自嘲でなく、肩を震わせる高笑を、だ。
「それで、どうなさるの? あれほど望んだものをまた手放すの? それともその手で壊すの?」
どちらにしても望む結末なのだろう。殺し損ねた息を吐き、カイトは強く強くミクを睨んだ。
陽が本当に暮れ出したかのようだった。影は落ちず、けれど辺りは暗くなっていく。窓の外も室内も。
「そうでしょう? 伯爵家のお嬢様が、いつまでも嫁さずにいられて?」
父と婚姻を結ぶことができず、他家へ嫁したメイコの母親のように。
暖炉の火の色が強くなり、部屋が急に赤くなった。だがカイトは火など恐れない。火は何も奪わなかった。
カイトから奪っていったのはすべて人の手によってだった。
青の眼光の先で、けれど余裕は消えない。当然だろう。ミクの言う通りだ。策略がなくとも、いつかは突き付けられる選択だった。無邪気な幼子のまま、仲の良い姉弟でいられた日々はとうに過ぎている。
押し黙ったカイトを見詰め、ミクはまたふわりと立ち上がった。踵は返される。カイトは留めない。留める意義はない。
望む結果を得て揚々と去る背を視線で送る。その思惑に沿い楽しませることにはなっても、それがカイトの望みを違えることになるとは限らない。要は乱されないことだ。
注視し、心を砕き、謀られぬように。
カイトが視線を置く先で、ミクはドアノブに手をかけ振り返った。突に思い起こした風で笑う。ああ、そうですわ。
「これは本当」
振り返った仕草で長い髪がふうわりと広がった。
「愛しているわ、お兄様」
嘘、偽り、あるいは真実。その言葉がミクの本心だったとしても、その愛は肉親への情か異性への囁きか。
動揺を露わしたカイトの一瞬の表情に満足したのだろう。返る答えを待たず、厚く重たい一枚板のドアは閉ざされた。白い少女の姿の消えた扉を睨む。
ミクの言動はいつも不可解だ。謎解きを吹っかけて、悩む様を楽しんでいるかのよう。けれど視点を変えれば、それが彼女の情の示し方ということかもしれない。愛情が単に温かく甘やかなものだなどとは、カイトとて考えていない。
ぞくりと寒気を感じ、窓外に目を遣った。また雪が降り出していた。
陽が落ちたのではなく、雪が降り始めていたのだ。ひとひら、ふたひら、雪は降り下りる。降り下り、雪はすべてに降り積もる。葉の落ちた梢に、常緑をたたえる葉の上に、あるいは冴え冴えと大地に。
雪は降り積もりすべてを白く埋める。
ふと脳裏によみがえったのは、母の最期の夜の表情だ。カイトは母の死に目に立ち会っている。父を亡くした日の夜だった。
彼女は息子を呼びつけ、その眼前で杯を呷ったのだ。見せ付けるように溶いた粉薬の意味は、首を捻る間もなく理解される。その杯に、正に口をつけようとするその時、カイトは初めて彼女の笑う顔を見た。
白く染まる庭を眺めるうち、ぞくりと悪寒が走った。暖炉の火は変わらずに赤く燃えているが、窓を隔てても忍び込む冷気がやはり体温を奪う。
冷やかさに目を細め、カイトは窓辺を離れた。顧みられることなく、窓辺には雪が、暖炉には火が燃えていた。

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