カイメイ中心
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メイコ愛をこっそり謡う
夕食も入浴も済ませ、兄弟が思い思いに過ごしている時間だった。メイコがリビングに明日の兄弟全員の予定を確かめにくると、ミクとリンとレンがソファの傍で立ったり座ったりしながら丸くなっている。いつものリビングはリンとレンがテレビゲームをしていることが多いのだが、今日は即席の両表のコインで運命の分かれ道ごっこらしい。
「だから、こう…真っ直ぐに弾くんだよ」
訂正だ。運命の分かれ道ごっこをするためのコイントスの練習に余念がない。
「うー…ぜんぜん上に上がらないよー…」
「レン、レン! もう一回! もう一回やってみせて!」
劣等生二人に講師一人。苦戦しているらしい。練習用に表裏一体のコインは三枚に増えている。
壁にかけられたカレンダーに向けていた視線を返すと、講師役のレンが縋るような目を向けてきた。弟の苦労を慮って、メイコは三人に向けて声をかける。
「あんたたち、そのくらいにしてもう寝なさい。明日も仕事でしょ?」
朝の早い予定が書き込まれていたルカは、ついさっき就寝の挨拶をして部屋に戻っている。あとはカイトだが、彼は夕食後のお茶もそこそこにネットワークに入り浸っていた。何をしているか予想はつく。
声でもかけに行くかと小さく笑うと、リンが弾むように歩み寄ってきた。一回だけ、とコインを差し出してくる。
「一度だけ、よ?」
コインを受け取り、目を輝かせるリンの前で弾いて見せた。銀色のコインはくるくると宙に舞う。ぱしりと手の甲で受け取ると、妹二人から感嘆の声がこぼれた。
「練習、した?」
メイコはかぶりを振る。私がPVに出たりしたわけじゃ、ないもの。
「ええー…じゃあなんでそんなに真っ直ぐ上に上がるの?」
ミクは納得がいかない風だ。得手不得手かしらね、と答えるよりはない。リンにコインを返し、コツをつかめば簡単よ、と言い添えた。
更に促すと、はーい、と重なり合う声で答えて三人は素直に立ち上がった。
「「「おやすみなさーい」」」
ドアで振り返った妹たちと弟に、お休みを返す。けれど。
リビングを出たところでミクの足が一度止まった。
「あ、お兄ちゃんも」
おやすみなさい。声とともにふわりとなびく長い緑の髪が壁陰に消えて、代わりに背の高い立ち姿が入ってきた。お休み、と妹に答えていた声音からはちょっと想像し難い、拗ねた顔をして。
夕食前のあのことだと一目で分かる。
「ひどいよ、めーちゃん」
歩み寄ってくるカイトに、悪かったわと答え向かい合う。
-続-
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