カイメイ中心
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メイコ愛をこっそり謡う
「あんたたち」
丁々発止の舌戦の最中に、当の歌姫から声をかけられた。目の前にすっと、親指に乗せられた銀色のコインが差し出される。
「表が出たら私の勝ち、夕飯の仕度にかかってもらうわ。だけど裏が出ればあんたたちの勝ちよ。どちらがドラクゥでも好きなだけ付き合ってあげる」
否やの間はない。にこり、笑んで、真紅の爪先がぴんとコインを弾いた。
跳ね上がるコインは蛍光灯に鈍く光り、踊りながら放物線を描く。6対の眸が見守る中、ぱしりと白い手の甲に受け止められた。
に、と唇の端を引き、メイコはコインを乗せた手の甲を、カイトとルカの方へ差し伸べて寄越す。コインは表を向いていた。
「私の勝ちね。さ、夕飯にしましょ」
呆気にとられていたカイトは、くるりと踵を返し向けられた背にはっとする。収まりつくはずがない。キッチンへ向かおうとするメイコを、カイトは慌てて追いかけた。
ルカは取り残されて、場の空気を持ち去った鮮やかな手並みへの感服と、決着を付けられなかった悔しさを噛んでいた。
「待ってよ、めーちゃん!」
カイトがひと通り済ませておいた下ごしらえを、見回すメイコの隣に立って手を出した。
「そのコイン、見せて」
するとメイコは悪びれず、むしろ楽しげにイカサマの証拠のコインを、差し出された手に乗せた。
「めーちゃん…」
コインは二枚を両面テープで接ぎ合わせ、不細工ながら両表になっていた。情けない声を出して眉尻を下げたカイトに、メイコは告げた。
「『イカサマもギャンブルのうちよね? ギャンブラーさん』」
意味を取り損ねぱちぱちと瞬いたカイトの目の前で、くすくすと楽しそうに笑う。ルカはそのキッチンの様子にひどく不満げで、レンがやれやれとばかりに肩を竦めた。
リンは目を輝かせ得心した様子で、ミクがそんなリンにこっそりと尋ねていた。
お姉ちゃんのあのセリフは誰なの、と。
-続-
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